特撮談義4

 一作目というのは大切なものなんですね。仮面ライダーもウルトラマンも平成時代の作品の方が内容も特撮も初代を遙かに凌駕していると思うのですが、ゴジラに関してはそのストレートな主題故に初代を越えることは出来ないのかも知れません。逆に平成ガメラシリーズに関しては初代のガメラの作りが拙作の域を脱していないので、あっさりと初代を越えてしまっている感じがするのとは偉い違いです。

 ゴジラに関してはやたら今までのことはなかったことにしようと言う展開が多すぎるのも気になるところです。まんま続編の「逆襲」に当場したゴジラはいわば正統的な2代目ゴジラです。この2代目が「メカゴジラの逆襲」までひたすら頑張り続ける。いわゆる84ゴジラ以降が平成ゴジラシリーズ。84はもう一つの「逆襲」です。あっさり、昭和の2代目の存在は無視されました。チャック・ウィルソンや中川安奈の介入で歴史がぐちゃぐちゃになった後で、とにかく平成ゴジラは平田昭彦の亡霊のようなデストロイヤ戦の後に自爆。その後、ミレニアムゴジラが3回目の無かったことにしようをした後で、ラドンの餌だったはずのメガヌロンの成虫と戦いました。そして、ついに4度目の無かったことをして、「大怪獣総攻撃」に突入するのであります。

 護国聖獣という呼称からして、小泉首相の靖国参拝論議を再燃させそうな設定が危ない2002年の正月映画です。とはいえ、護国聖獣が弱すぎる。というよりも、その設定に本来スターであるはずのモスラたちを使ってしまって良いのかは大きな疑問。バラゴンは確かにスター性はないけれど、主演映画は完成度高いし、その後、幾たびも初期ウルトラシリーズに貢献した怪獣としてマニア受けしている怪獣です。ある意味で自分の役割を全うしたという感じで、「怪獣総攻撃」の中でも唯一匹、善戦したのはバラゴンだったと思います。そもそもバラゴンは小さいので、ゴジラとは戦えまいと思っていたのですが、彼との箱根決戦は一番スリリングで良かった気がします。護国聖獣の役を出来る東宝怪獣と言えば後はバランか獣人雪男くらいしか東宝にはいないはずです。モスラは南洋生まれだし、そもそもギドラは宇宙怪獣ではありませんか。

 モスラもギドラも小さいし、困った展開。ともかく、宇宙超怪獣キングギドラはどこへいってしまったのだろう。あのむちゃくちゃ強かったキングギドラは。「怪獣総進撃」で9対1のハンディ戦で力尽きるまで、死んだことがなかったのだから、あの強さは半端ではなかった。まぁ、たかがゴジラとラドンと小競り合いして逃げちゃったこともありましたが、とにかくギドラは強い、負けない、いや死なないというイメージが昔はあった。それが平成ゴジラで超ドラゴン怪獣として合成復活されて以来の連戦惨連敗はどうしたわけだろう。ゴジラをひたすら悪玉と描くことで成立していた平成シリーズ以降は、ゴジラ以上の強い怪獣の存在は認められない世界ではある。ゴジラに勝てば、その怪獣が人類の敵になるだけだという高嶋政伸の台詞があるように、そんな怪獣が出れば、ゴジラシリーズの終焉だとばかりひたすらゴジラはチャンピオンベルトを守りつつけるしかないようです。末期のハーリー・レイスか、リック・フレアーみたいなものです。王道プロレス的展開で、昨今の格闘技界のようなスリリングな展開は所詮、東宝唯一のドル箱シリーズとしての宿命の前では望むべくもないのでしょうか。

 双子の小美人抜きのモスラというのも斬新は斬新だが、あそこまでモスラやギドラのキャラクターを無視してしまってはまずいと思う。あそこまで、無視するのならいっそ新怪獣でゴジラに対抗するべきだったはずである。とはいえ、新怪獣の描写に取られてしまうと時間的、予算的にもつらいので、間に合わせてしまったという感が否めない。平成ガメラの監督を務め続けた金子監督作品と言うことで、スリリングな展開を期待したのですが、東宝の正月映画というポジションに負けてしまったとしか思えない。また、ゴジラが戦没した兵士の魂が憑依した姿であるという解釈はすでに宝島ムック等でけっこう言及されたネタで新味に乏しいものでした。

 まっ映画を見た後で様々なツッコミを親父が訳知り顔で子供にできるようなファミリー映画になっていたのだと思えば、不満もないかも知れない。私が子供の頃の大人は当然、ゴジラを子供の頃に見たことがないので、怪獣映画に関して愛情を感じてはいなかった。その点、この映画は親子で映画鑑賞をした後で、子供に蘊蓄を傾けて、親の権威(?)を誇示できる映画になっていたのかも知れません。演技が危なっかしい宇崎竜童ながら、丁寧に強い父親像を演じていました。劇中の人間ドラマは父娘の絆の物語でした。テーマが千年竜王ということなので、新山千春と宇崎竜童という組み合わせだったのですね。

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