平成ゴジラならば、「ゴジラVSビオランテ」が素晴らしい。東宝自衛隊久々の大活躍である。技の大映、力の東宝、それぞれの自衛隊の攻め方には特徴がある。この時の東宝自衛隊はスーパーXUやら電子レンジ作戦、高嶋政伸のハイテク作戦に峰岸徹の肉弾突撃とずいぶん見せ場を作っていた。人間ドラマこそが特撮映画をふくらませるよい見本。それだけにラストの三田村邦彦の盛り上がらないアクションや沢口靖子ののっぺらぼうなモノローグはいただけなかった。この時期の沢口靖子はまだまだ東宝シンデレラが抜けていない頃だったので、「竹取物語」然としたモノローグが平田昭彦なみの科学者であったはずの高橋幸治の荘厳な死を台無しにしてしまった。至極残念。しかし、それまでのエピソードをアクションでつないでテンポがよく、平成ゴジラでは一番の出来である。実際、ゴジラを活動不能に追い込んだのだから(未来人がちょっかいさえださなければ)ゴジラを倒したと言っても過言ではない。白神博士は平成一の科学者だったというべきである。ちなみに「ゴジラ1984」は新宿でのスーパーXとのビル越しの放射火炎とレーザー光線の撃ち合いはスケールがでかくて良かったが、全体的に特撮センスに欠けていた。特に酷かったのは石坂浩二が腰を抜かすゴジラ登場シーンのティルトアップ。視点がむちゃくちゃで、いっぺんに映画が嫌いになった。その後の「ゴジラVSモスラ」においての幼虫モスラの前進シーンのいいかげんさは、噴飯もの。蠕動運動の描写が全くなく、いかにも線路の上を滑るように前進する平成モスラは昭和モスラの幽霊のようだった。大河原&川北コンビは相性が悪いのか、特撮イメージがうまくスィングしていなかったようである。
昭和ゴジラの1作目から「怪獣総進撃」までは文句を付けたくない。文句も覚えずに子供の頃に見ていたので、今更あら探しはしたくない。子供心に興奮したのは「キングコング対ゴジラ」や「モスラ対ゴジラ」など、年末になると放送されていた冬休みこども映画劇場で見た作品群である。白黒で見たゴジラの初登場シーンやアンギラスとの死闘は脳裏に焼き付いている。本多猪四郎監督の真骨頂は市井の平板な人間ドラマと群衆シーンの巧みさにある。特に群衆シーンは未だに監督のものを超えている特撮映画はない気がする。また円谷英二の特撮はロングショットに、その凛とした爽快さがあったと思う。キングギドラが遠くで暴れていたりするのが、なんとなくのんびりと見えるリアルさは実に素晴らしい。あのロングショットがハリウッドですら再現できないのは何故なのか。大きな疑問である。昭和ゴジラで楽しいものを一つといえば、私はモスラ親子の仇討ちといった泣きの要素を取り入れた「モスラ対ゴジラ」を推す。幼虫モスラとゴジラの決戦にカットバックして島の分校の生徒たちの脱出劇が唐突に展開されるが、母なるモスラは子どもを救うということで、邪魔にはなっていないと思うし、あの挿話が絡むことで本来は格闘になりそうにない異種格闘技戦にアクセントをつけていると思うのである。
ゴジラ以外では、「地球防衛軍」「宇宙大戦争」「海底軍艦」のSFもの。完成度の高いものは「地球防衛軍」だ。ファーストシーンの盆踊りの場面などに本多監督らしさが実によく出ている。モゲラ(かわいい!)が登場して、壊れてしまうまでの夜間シーンの脂っこい色彩設計は実に生々しい。後半の宇宙人とのドーム決戦はあまりにもミニチュア然として悲しくなるが、地球防衛軍マーチを聴きながら目をつぶって見れば気にならない(!)。「宇宙大戦争」はどうしても「地球防衛軍」と比べてしまうと「大味だなぁ。」という印象は否めない。しかし、スターウォーズが登場するまでの20年近くは文句なしに世界一の「宇宙大戦争」映画だったのである。
個人的に一番好きな東宝特撮映画は「海底軍艦」である。特に上原謙のキャラクターが好きだ。「日本は戦争を放棄した。」とか言って田崎潤をたしなめておきながら、いつの間にか艦橋で軍帽をかぶって気張っている困った親父である。ストーリーに無駄がなく、特撮も冴えている。主役は無論、海底軍艦そのもの。海底軍艦試運転のシーンの高揚感や東京湾にゆったりと飛来するシーンの頼もしさは正に千両役者。出撃すればそれこそ破竹の勢いでムー帝国を撃滅してしまう、圧倒的な戦力。まるで全盛期のスチーブン・セガールのようで素晴らしい。水をくくるシーンにもう少し注意をして欲しかったし、主砲の発射やエアシップ・コンビナート(?)との空中戦も見たかった。石棺潜行艇との対決にいきなり必殺技の冷線砲を発射してしまい、砲撃戦や雷撃戦は夢で終わってしまった。しかし、夢は夢で終わってよしとする。轟天建武隊のメンバーで御達者な人がいたとしても、もう海底軍艦は動かせまい。多分、海底軍艦は事件解決後、太平洋で眠りについたのだろう。
そういえば、自主映画で関西のどなたかが「続・海底軍艦 帝国の逆襲」という自主映画を撮ったという噂を昔聞いたことがあるが、ご存じの方はいらっしゃるだろうか。どんな内容かっ・・まあ当然予想はつくのだが、是非詳細を知りたいものである。スターウォーズに先駆けて東宝が作り上げた「惑星大戦争」でも海底軍艦轟天は宇宙戦艦に再び改造されて(?)登場しているそうだ。つまり、海底で沈む戦艦大和が地球の危機に勇躍、宇宙へ飛び立ったように。まぁ、余談であるが、この手の話題をさらに補足すると90年代にはアニメ版の海底軍艦も存在している。とはいえ、私にとっての海底軍艦は東宝の1968作品の是を於いて他にない。
Copyright(C) 1980-2023 SUPER RANDOM Com. All rights reserved