太陽にほえろ!

 本放送で頻繁に見るようになったのはテキサスの頃からだ。マカロニやジーパンの頃は再放送で見た世代。結局、一番熱中して見ていたのはテキサスであり、スコッチが活躍した頃なのである。つまり中学生の頃だ。その後は殉職と新刑事登場編くらいしかチェックしていない。筋金入りのファンからは叱られそうだが、私はごく普通の「太陽にほえろ!」ファンだったのかもしれない。マカロニやジーパン刑事の頃は屈折した青春ドラマの要素があり、今思うと見応えがある。しかし、明るく爽やかな「よい子」であるテキサスのイメージはより広範囲な視聴者に受けたのだと思う。テキサスの登場によってはじめて「太陽にほえろ!」は市民権を得たんじゃないだろうか。

 そもそも夜八時台の娯楽番組にショーケンや優作は合わない。あの二人は九時以降でないとしっくりこない。私がテキサス編ではじめて「太陽にほえろ!」になじんだのもそのせいかもしれない。最初からショーケンや優作のファンになれるほど私はまだ若者ではなく、子供だった。ショーケンや優作の姿に等身大の若者を感じていた世代はテキサスの登場で「太陽にほえろ!」を卒業してしまい、それぞれ九時台や十時台の番組で活躍する彼らにマカロニやジーパンの残像を追いかけていってしまったに違いない。「太陽にほえろ!」で決定的な役を得たテキサスのキャラクターはそのまんま勝野洋である。勝野洋はどの役をやっても未だにテキサスに見えてしまうのは私だけではないだろう。彼がキャラに合わないことをしたのはキャッシー中嶋と結婚したくらいしか思いつかない。

 マカロニは立ちション中に財布目当ての暴漢(バンパイヤ)に襲われ、ジーパンは命がけで守ってやった男(八百)に撃たれる。マカロニやジーパンの殉死は身も蓋もなく言ってしまうと犬死にであり、本人の不用心によるものだが、テキサスは犯人グループと正々堂々の銃撃戦の上に全員を殺さずに倒し、逮捕させている。結果をきちんと出した上でのいわば「男子の本懐」的な死である。しかもテキサスの死はボスを覗くメンバー全員に看取られての死だった。「太陽にほえろ!」の殉職の場合は死後発見されるパターンの方が圧倒的に多く、死を仲間たちに看取ってもらった刑事は少ない。テキサスはかなり豪華な扱いをしてもらったといってよいだろう。新人初の「よい子」刑事であったテキサスは彼にふさわしい報酬を得たというべきか。新人刑事は一年で殉職というジンクスを破って「日本テレビ音楽祭金の鳩賞(二年目も頑張った新人がもらえる賞)」を初めて受賞した(?)刑事としても「太陽にほえろ!」史上、特筆すべき刑事なのである。

 テキサス亡き後、颯爽と登場としたのがスコッチである。クールで一匹狼を絵に描いたような劇画的キャラクターにしびれてしまっただけに、「さらば、スコッチ!」で殉職してしまった方が良かったと思っているのは私だけではあるまい、その後、たまに現れていいとこを攫っていったり、レギュラーに復帰したりするが、最後には病死してしまう。沖雅也自身の晩年が心身ともに、公私ともに不幸だったことがスコッチというキャラに出てしまったのか、後味の悪い印象だった。病室でゴリさんに死を看取られるというのも、スコッチらしくない格好悪い死に様だった。スコッチが大活躍をしていた時期をリアルタイムで知るものとしては情けなくて涙が出る。スコッチ系を狙っていたジプシーは殉職せずにどこかへ転勤してしまったし。

 新入りの青春刑事が活躍できるのも、それを受け止める大人たちがしっかりしていればこその設定である。初期のレギュラー陣は新入り刑事よりも数段大人で充実していた。いかにもデカらしい直情径行型の刑事、ごり押しのゴリさん。人情派で粘りのある捜査が身上のチョーさん。フェミニストな振る舞いが板につき誠実な殿下。推理力と心理戦、闇ルートにも長けた落としのヤマさん。(この四人もテキサス同様、演じた俳優たちはその後キャラから脱皮できていない)すべてを包み込み、絶対の信頼を生むボス。長寿番組となり、このレギュラー陣が次第に欠け始める頃から、「太陽にほえろ!」は傾きはじめたのである。若者と大人のぶつかり合いと和解がこのドラマの重大な要素だったのに、ゴリさん亡き後は山さんが孤軍奮闘していたものの、刑事側のドラマ性がどんどん薄くなっていたような気がする。

 初回からのレギュラー陣で殉死しなかったのは三人。ボスは本庁に栄転。チョーさんは警察学校の教官、さらに現場復帰(「太陽にほえろ!PART2」)と結構波乱の人生を送る。チョーさんが退職後、保護観察員をしながら、七曲署を表敬訪問し、ボスの椅子に話しかけるというシーンを見た。(「太陽にほえろ!七曲署捜査一係」)あの雰囲気では本庁に栄転後、やはりボスは病死してしまったに違いない。ちなみにおシンコこと内田信子はジーパンの死とともに七曲署を離れて以来、行方知れずだったが、科警研で働いていることがわかった。(「太陽にほえろ!2001」)案の定、ジーパンとの過去を引きずって独身のままだったのが悲しい。

 不慮の事故で死を遂げる殿下。テキサス同様銃撃戦の上で果てるゴリさん。暗殺されるヤマさん。ボスが直々に現場まで来て死を看取ったのはゴリさんだけである。(この回を本放送で見た次の日に弾着の撮影が偶々あって、気合いが入りすぎ、俳優の背中の皮膚が破れて流血してしまった。)参考人の女性を守って犯人と撃ち合い、電話ボックスで息絶えるボンは受話器を握りしめボスの声を聞きながら死を迎えた。ヤマさんも死の直前にボスに定時連絡を入れている。ボスと部下たちの絆の深さを感じさせる。テキサス殉死の回もラストシーンはボスの涙顔だった。テキサス編で最高の高揚感を味合わせてくれるのは「死ぬな!テキサス」という回で、テキサス絶体絶命の危機に颯爽と登場するボスである。

 その他の死にっぷりをたどると、もう余り殉職者はいない。ロッキーがロッキー山脈で死ぬというしゃれにならない殉職。ボテ腹が死後、エレベーターのドアに挟まって利用者に迷惑をかけていたラガー。人混みの中で刺客に刺されるボギー。この三人の中で日の当たる死に場所を得たのは・・ロッキー山脈の自然を守って死ぬという名誉を得たロッキーくらいか。最後に悪のりして「太陽にほえろ!死にっぷりベスト10」を作っおくことにする。

順位

話数

放映日

刑事名

コ メ ン ト

213

76,9,3

テキサス

「皆さん、お世話になりました」最期の言葉ですら律儀なテキサス。

363

79,8,13

ボン

「ボス・・・・っ」最期の言葉がずっとボスを悩ませたことでしょう。「逆探!」

525

82,10,1

ゴリさん

90分枠だったこともあり、大団円で豪勢な殉職。恵まれ過ぎ。

658

85,8,2

ラガー

ライフルと拳銃で撃ちあうなんて、的がデカイだけに不利でした。

111

74,8,30

ジーパン

無意味な死なら「探偵物語」の勝ち。「死にたくないよ!」と泣く。

519

82,8,20

ロッキー

青春刑事だった割に、いつの間にか家庭まで築いていました。

691

86,4,11

山さん

後少しで最終回というのに何故山さんが・・・。

52

73,7,13

マカロニ

山さんに助けられて九死に一生の直後の死。熱くて泣いちゃう。

597

84,4,6

ボギー

「まだ、やりたいことあるんだよおっ!」しかし、ただでは死なない。

10

493

82,1,29

スコッチ

胸の古傷が悪化して病院で死ぬ。萬錦版「拝一刀」の顔みたい。

番外

414

80,7,11

殿下

過労死と認定されなければ殉職ではなく、交通事故死。特進なし。

 ちなみに私の作った「太陽にほえろ!」のパロディドラマ「必殺にほえろ!」に登場させたのはボス、山さん、マイコン、ジーパン、テキサス、マミーの6人であり、途中で華々しく殉職するのはテキサスだった。更に警察権力を越える巨悪に挑む必殺仕事人に中村主水、飾り職人の秀、組紐屋の竜、何でも屋の加代と言った面々が加わり、時空を越えて七曲署と仕事人が手を組むという物語である。

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