任侠ライダー参上!

任侠といえば、東映任侠映画と言うことなのでしょうが、正直あまり見ていない。しかし、その魅力は理解しているつもりである。我慢に我慢を重ねたあげくに「もう勘忍できない」と静かに切れてしまう高倉健や鶴田浩二、藤純子たち。感動の頂点はその切れる瞬間と殴り込みの直前の道行きのシーンにある。(その部分をワンパターンな見せ場にしたのが毎度おなじみの必殺シリーズ、出陣のシーンである。)そこに助っ人が駆けつけるところに一番の感動があるのであって、決してクライマックスの殺戮がメインというわけではない。(クウガの最終回を参照してください。)

 正統派任侠映画の場合、クライマックスは主人公が切れたことによって完全に最高潮に達しているのであるから、そこまできて更に助っ人を殺して盛り上げる必要がないのだろう、最後の大殺陣で助っ人役が死ぬという場面は記憶がない。そういえば「二代目はクリスチャン」でも主人公が切れる瞬間が一番感動的だったし、最後の大殺陣で登場する助っ人は死んだりしなかった。志穂美悦子最後のアクション映画だから是非見て欲しい。ちなみにこの時の彼女の演技がのちの「蒲田行進曲」の完結編「銀ちゃんが行く」(未映画化)以降のつかこうへいによる沖田総司もののイメージにつながる気がするのは私だけか。

 なにはともあれ、あの任侠映画で、単身殴り込みをかける主人公の道中に、すっと現れる助っ人のなんと頼もしいことだろう。あれはきっと東映三角マーク映画の一番大切な部分なのだろうなと思う。というよりも誰もが抱いている願いなのかもしれない。誰だって困った時やつらい時には誰かに助けてもらいたいはずである。神や仏(ましてやウルトラマン)が助けてくれないのならば、助けてくれるのは人間しかいない。しかし、本当に困っている時、命を懸けて助けてくれる人がいるだろうか。友情だけで自らの人生を棒に振ってくれるような友が本当にいるだろうか。その人にはその人なりのしがらみがあるはずだから、それをあっさりと捨てられるということは、天涯孤独のアウトローでもないとそれは無理というものだろう。自らの人生を捨てでも、誰かを救う。このボランティアな構図を立ち上げるために任侠映画の世界は絶好な舞台なのかも知れない。学校の指導要領に奉仕とか言う言葉を盛り込もうとするから、角が立つのである。道徳の時間ではなくて、「任侠」の時間とすれば丸く収まるのではないだろうか。そもそもボランティアなんて言う英語は「任侠」と訳せば良かったのだ。

 善なる暴力も暴力である限り悪とされるだろう。彼らは悪となることで正義を実行するしかない。それでしかリアルなヒーローは成立しないと言うことなのだろう。

 東映映画の世界では助っ人の役は親友ではなく、立場を越えて共感してくれる自分の好敵手である場合が多い。昨日までのライバルが、友と認め合い命を投げ出すという展開である。実際、ヒーローマンガはそうやってライバルのインフレを起こしていく。「リングにかけろ!」にしろ、「幽遊白書」にしろ、「宇宙戦艦ヤマト」にしろ、元々は敵として主人公の前に現れる。矢吹丈と力石徹やロッキーとアポロの例を出すまでもなく、真のライバルは妥協しない真の友である。エースのジョーとかコルトの銀とか言った日活映画で宍戸錠が演じていたライバルは最後まで敵であることでも、その美学を貫いていた。ルパン三世と石川五右ヱ門も本来はそんな関係のはずである。

 各地で盛んに行われているヒーローのキャラクターショーも実に任侠の世界であることに気が付いた。ピンチに落ちるクウガ、絶体絶命の危機。その時、「待て!」と野太い声が会場に響き、爆音とともに登場するのは、言わずと知れた仮面ライダー1号、2号……たちなのである。本来、クウガと歴代ライダーは住む世界が違うはずなのだが、特設ステージではみんなが仲間(義兄弟・・・「兄弟仁義」!)になってしまう。この展開に、会場の子供も親父も熱狂してしまうのである。日本の子供たちはこんなに小さい頃から任侠道に目覚めさせられていたのである。道理で、日本で唯一元気な映画会社が東映であり、Vシネマだけが成功したのも頷ける。子供相手に将来の顧客をさかんに増やしていだ。実に遠大な営業努力のたまものである。子供にやたら任侠道を仕込んでいたのだ。

 義侠心のために世界中の悪の秘密結社と戦っている我らのライダーチームという設定には、子供心にも夢があるんだろうと思う。何しろあの昭和のライダーチームとは別な世界観を持つはずの平成1号ライダーことブラックRXのテレビ放映時の最終回ですら、とうとう「仮面ライダーだよ全員集合!」になってしまった。でも、RXのピンチを救った昭和ライダーたちと一瞬で意気投合してしまうRXも素直すぎるかもしれないが、私的には感動的だった。英雄は英雄を知る。正義のために戦う男同士は無言で分かり合えると言うことだ。いや、あれはネアカのRXだったからできたのであって、ネクラのブラック時代だったらああは素直に信じられず、一人で無茶をしたに違いない。「俺の目を見ろ、何にも言うな」という北島三郎の歌が聞こえてきそうで、やっぱり任侠だった。

 キャラクターショーの代表的な物は東映ヒーローショウとウルトラマンショーにとどめを刺すだろう。一度、近くのデパートの広場でウルトラマンガイアショーをやっているのをのぞいたら、ガイアの危機にダイナが助けに来ていた。しかし敵の怪獣がバルタン星人指揮するパンドン(?)ビーコン(??)というわけのわからない連合軍だったのには驚いたが、嬉しかった。そういえば何年か前の、紅白歌合戦にもセガタ三四郎と仮面ライダーが登場し、イカデビルをやっつけている勇姿に遭遇したっけ。ライダーは紅白の平和まで守っていたのかとつくづく感動したものだ。ご苦労なことである。そういえばライダーとウルトラマン、すなわち東映と円谷は最近ますます仲がいいらしい。近所で見られるライダーショーの司会のお姉さんはいつも円谷プロの水色の制服を着て出ている。アトラクション部門の仕出しの窓口は一緒になっているのかも知れない。 

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