魅惑の古雑誌

魅惑の古雑誌

　昔から本は好きでしたが、ずいぶん処分してしまいました。ソノシートのついた怪獣図鑑なども大切にしていましたが、近所の年下の子に全部配ってしまいました。小学校卒業の通過儀礼のようなもので、私も普通の少年だったのでしょう。その後、大学に入ってから特撮やオカルト雑誌に再びはまるのですが、それはそれでブームに乗っていたことになるのでこれも平凡かも知れません。あの当時の学生の熱意が８４ゴジラを世に生み出し、ついでに沢口靖子を東宝シンデレラにしてしまったのです。先輩と新宿をドライブした時に西新宿の住友ビルの周りを回りながら、「ゴジラはあっちから来たわけだから、この辺りにスーパーＸが落っこちたんだ。」と馬鹿な会話に花が咲いたことを懐かしく思い出します。当時の８４ゴジラについて先輩は「ゴジラは有楽町マリオンの脇を抜けて新宿に来たのに、どうして甲州街道から新宿入りしたのだろう。」と至極もっともな疑問を呟いていたのを今でも覚えています。

　朝日ソノラマから出ていた「大特撮」。コロッサス編、監修は御大、本多猪四郎。こちらは日本の特撮解説本の走りです。内容充実の座右の名著、一家に一冊は欲しいものです。この本で素晴らしい日本特撮文化を味わいましょう。図版は少ないが実際に映画を見るよりも楽しいかも知れません。作品を批判するような部分が少なく、ほぼベタ褒め状態の解説書です。しかし全体に真面目な愛が感じられてよろしい。この本を買うか買わないかで３日くらい悩んで、購入。だって昭和５５年当時２５００円もしたんですから。しかし、買って一度も後悔しなかったし、今でも全く後悔していません。

　学生の頃、朝日ソノラマにファンタスティックコレクションというシリーズがあって、ウルトラマンなどのテレビ特撮を中心としたムックがありました。今でも大事にとってあります。当時はウルトラマンのビデオが１巻１話入りで定価６５００円の時代です。「ウルトラマン　特撮ヒーローのすばらしき世界」１１００円。このようなフィルム・ストーリー・ブックで特撮ファンは飢えをしのいでいたと言うことでしょう。熱心なマニアはきっと全巻購入したりしてたんだろうなぁ。そんな人に限ってＤＶＤもボックス買いとかしてるんだろうから、マニア様々である。門外漢には無価値に見える玩具に寝食を忘れて貢いでくれる。そういう人たちがいないと文化なんてのは育たないのでしょう。

　さて、中学の頃に手に入れた妙な雑誌。今も存命かはどうかは知らないのですが、空飛ぶ円盤の専門誌「ＵＦＯと宇宙」がある。元は「コズモ」という名前の雑誌でしたが、月刊の専門誌が出ていて、毎月購読していた私。ＵＦＯの写真集なども何冊かはまだ押入に眠っていると思います。なんとなくこういうネタが好きだったのです。当時はどぎつい少年雑誌のイラストなども妙に怖くてトラウマ化しています。大伴昌司にずいぶんやられてしまった年代なのだと思います。よく宇宙人の写真コーナーに写真じゃないくせに載っていた「フラットウッズ・モンスター」（３メートルの宇宙人）のお化けみたいな図版は今でも一番怖い宇宙人です。シューティングゲームの「ガンバレット」のＵＦＯを撃ち落とすとそいつが墜落してくるので、飛び上がって驚きました（嘘）。あの宇宙人が出てくる映画がないのが残念です。宇宙人と言うよりも妖怪的な怪物ですね、あれは。HPにはあの宇宙人を専門に扱っているサイトもかなりあるみたいで、きっと昔の私と同じように……あの観音様みたいでスカートをはいた宇宙人が「恨めしや」している手つきにしびれた方々がいるのですね。

　私自身は今でもお化け屋敷は嫌いだし、スプラッタ映画も当然嫌い。怖いのは大嫌いです。でも、テレビの心霊写真特集とかは好きで見ているし、実話怪談本もかなり集めました。こういうのを怖い物見たさというのでしょう。中岡俊哉著の「恐怖の心霊写真集」とか「狐狗狸さんの秘密」とか持っていたし。南山宏とか平野威馬雄とかの名前を見ただけで、今も胸のときめきを覚えます。「世界の怪獣」は手元に残しておくべきだった。

　怪しげな、でもずいぶん真面目そうな（？）「コズモ」と、表紙と目次だけでも、うさんくさい「少年ファンＶｏｌ．１」を紹介しましょう。果たしてＶｏｌ．２があったのかどうかも把握していません。巻末に石森章太郎原作、すがやみつる作画のＳＦ劇画「さよならを地球に」が掲載されています。これはひょっとしたら超レア物なのかなぁ。でも、彼はこの手の漫画をよく学習雑誌等に連載していましたっけ。

　どうです。なんとも魅惑的な目次。超充実のラインナップ。ただ「３　のろいと恐怖」がただのオカルト映画特集になっているところがいただけません。「悪魔のはらわた」のスチール写真なんかを子供向け雑誌に載っけて良いんでしょうか。ここのページをうっかり開けないように注意していたことを思い出します。