必殺
正月にテレビで「必殺!三味線屋の勇次」をちらりと見た。藤田まことが「久しぶりやさかいな。すうっとしたわ。」とラストでアドリブを入れていたが、確かに久しぶりに見る必殺シリーズだった。必殺シリーズは「必殺仕掛人」の本放送から、ちらちら見ていたので、感慨ひとしおである。思春期の頃はご無沙汰であったが、大学の頃に時代劇の好きな友人がいて、なんとなく再評価。その頃は午後四時あたりから再放送も盛んにしていたし、たまたま「仕事人大集合」というテレビスペシャルを見たのを機会にどっぷりと必殺ワールドに回帰してしまった。
1982年、10月。必殺ブームの先駆けとなった仕事人Vの黎明期だった。つまり三味線屋の勇次と飾り職人の秀の人気が絶頂にさしかかった頃である。その余勢で松竹は必殺の映画化を企画した。今のところ最終作である「必殺!三味線屋の勇次」は往年の必殺ワイドくらいのスケールではあったが、あんなプログラムピクチャーは作り続けてほしい。とはいえ、勇次の技を喜んでくれる人でないと、「大人の夢」たる必殺はそもそも楽しめないと思います。いわゆる必殺仕事人の映画は最新作を入れて七本あります。興が乗ったので以前の六作品を紹介してみましよう。今でもビデオ屋に多少は残っているはずです。見てほしい順番に紹介しましよう。
先ずは、「バトルロワイヤル」でボーナスをもらった深作監督の「必殺4 恨みはらします」。必殺をよく知らない人にはよい映画だと思います。適度にテレビ的で、千葉真一率いるジャックアクション軍団の活躍が堪能できます。ちなみに同チームのアクション映画と言えば「激突 徳川家光の陰謀」が有名です。ラストの−吹き替えだけども−緒方拳と千葉真一の大殺陣は痛快だったし、アクション映画のアイディアがいっぱいで、アクション監督千葉真一の面目躍如たる作品。「東京ラブストーリー」とか「踊る大捜査線」とかしか知らない人には、せりふもろくになく爆死する青島刑事の勇姿を見てほしい。
次は劇場用仕事人一作目「必殺!THE HISSATSU」。テレビの延長上のオールスターキャストとして無難な線です。芦屋雁之助の死に様に泣けるのは、「必殺からくり人」を見た人でしょう。研ナオコの「おむすびやま」のポーズが見られるのですが、とにかくテレビの必殺スペシャルを、そのまんまグレードアップした作品です。
三番目に控えしは、これぞ最高傑作の呼び声の高い「必殺!V 裏か表か」です。とにかく、レギュラー陣が次々と殺されていくという悲痛な映画です。これはある程度必殺に詳しい人が見るべきな映画です。私はこの映画で死んでしまう仕事人たちは、本当は「念仏の鉄」「棺桶の錠」「三味線屋の勇次」なのだと解釈しています。故工藤栄一監督の最後の傑作だったのかもしれません。(こういうと鍛冶屋の政は死んでいないと言う人がいると思いますが、映画の流れから言うと死んでいますね、あの人。)
次は問題作、「必殺!ブラウン館の怪物たち」でしょう。必殺のバラエティ番組的な面、サービス精神旺盛な面が、まことに陽気に炸裂した怪作です。友達どうして鍋でも囲みながら見ましょう。この映画は映像が貧弱ですが、音楽は楽しめる。京本政樹の美しさを堪能するのなら、角川映画の「里見八犬伝」もさらにお薦めですね。
次は「必殺!5 黄金の血」。ここでは「必殺仕事人X」最後の生き残りである若手仕事人の愛と死が描かれるわけですが、敵側のキャラクターの方が気になって、納得のいかない出来映えでしたね。舛田利夫は大したことのない監督だったと言うことを露呈してしまった作品。「二百三高地」と「さらば宇宙戦艦ヤマト」に私は感動したんだけどなぁ。しかし、ひも技系の仕事人が登場しない、と言うことではハード系の作品だったのかもしれない。血もでたし・・・。でも片岡孝夫と中村橋之助が出ていないのでマイナス50点。
残念ながら、私の評価としては六作品、いや七作品中、最下位の評価なのが「必殺!主水死す」です。あまりにもテレビ的な撮影とメリハリのない演出で最下位。主水が死ぬのは、そろそろ運の尽きということで仕方がないけれど、あまりにも秀と勇次の対応がクールすぎ。「必殺V」で仲間のために仕事を越えて命を懸けてしまった壱や竜とは偉い違いだ。後半あまりにも主水の死のために筋運びをしてしまったせいで、他のキャラクターが死んでしまったと思いますね。
以上が劇場版の必殺仕事人映画の紹介でした。(仕掛人の映画は別。)それと劇場映画とオリジナルビデオの中間的存在で田原俊彦と南野陽子主演の「必殺始末人」三部作もあります。南野陽子には「スケバン刑事」という代表作がありますので、当然、ひも技系を期待したのですが、何故か藤枝梅安風の衣装での刺し技でした。寂しい。
とは言うものの、二〇〇〇年になって「必殺」のBGMのベスト版が発売されるなど、潜在的な必殺ファンは不滅なようで、うれしい限りです。フジテレビの平成・池波正太郎シリーズは今後も期待させてくれます。と言っても原作が残っているのは「剣客商売」くらいしかないが。藤田まことも年齢相応の当たり役をつかんでさぞ嬉しいことでしょう。池波正太郎のファンは不満でしょうがね。でも、二〇〇一年に鬼平も復活するみたいだからいいか。
私が作った必殺と言えば、「い・け・な・い・40ロマンス」でのワンシーンがありますので、ちらっと見てみたい人は是非別館を訪れてください。そのNGシーンですが、見ることが出来ます。必殺のパロディと言えば「必殺 太陽にほえろ!」という凄いタイトルの作品を作ったこともあります。「太陽にほえろ!」の七曲署チームと「必殺!」の中村主水チームが時空を越えて共闘を果たすという「マジンガーZ対デビルマン」みたいな話……かなぁ。60分を超える作品だったので長さとタイトルを短縮して「必殺にほえろ!」という作品になって残っています。
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